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2011年4月21日(木)に 愛知教育大学学術情報リポジトリ は登録件数3,000件を突破いたしました。
文献をご提供いただいた皆様,リポジトリをご支援くださった皆様に心より御礼申し上げます。

3,000件目の論文は 中西宏文, 山本幸枝 "シラバスの現状と課題" 愛知教育大学研究報告, 教育科学編. 2011, 60, p. 181-186.でした。

 突破記念として3,000件目の論文の第一著者で,本学の情報処理センター長でもある 情報教育講座 中西宏文先生 にインタビューをおこないました。


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↑情報教育講座 中西先生


中西先生プロフィールは
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研究者総覧(日本語)




インタビュー中で話題の
愛教大のシラバスは
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愛知教育大学 授業情報




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↑インタビューの様子です

中西先生インタビュー 2011年 5月20日(金) 於:中西研究室

■研究分野について

インタビュアー: まず最初に先生の研究分野やテーマについて教えてください。

中西先生: もともと学生時代は音声認識といって,簡単に言ってしまえば,マイクから入力した人間の話した音声を, コンピュータで処理をして文字にする研究をしていました。就職してからもしばらくはその研究をしていたのですが, 音声認識はマンパワーをかけて研究所で大規模にやっていくような研究になってきて,限界を感じるようになりました。 音声認識の研究もコンピュータを使ってシステムを開発するということでしたが, やはり教育学部にいる以上は教育学部に役に立つ研究をしなければいけないということで, 大学の中で役に立つシステムを作るというように,研究がシフトしてきました。

■ シラバスの導入から拡張

インタビュアー: 3,000件目になった論文がまさに大学の役に立つシステムの開発について書かれた論文ですね。 この論文の内容をお教え下さい。

中西先生: 遡ると今から15年ほど前になりますが,授業の内容について学生に広くオープンにしなければならないという流れが, 全国的に出てきました。私の所属していた情報科学コースでは,いち早く冊子のシラバスを作ったのですが, 翌年からは全学的に冊子を作って,それまでは数行程度の簡単な授業内容の紹介だったものを,A4の半分ないしは1頁を使って, 学生に知ってもらおうということになりました。当時は紙で配布していたのですが,学生さんが興味のある授業を探そうと思っても, すべて目を通していかないと見つかりません。そこで,これをコンピュータ上に載せようということで始めた研究が一番の原点となっています。
 私の研究室で開発した,コンピュータ上でシラバスを見られるようなシステムを,1998年頃から提供し始め, 2000年過ぎからはWebページで見られるような形に発展させてきました。当時,ちょうど大学院まで進んでくれる学生さんがいて, Web上で見るシラバスは,かなりしっかりした枠組みを作ってくれましたので,閲覧側のシステムとしては, そのシステムを2008年度くらいまで,長期にわたって使っていました。
 最初は閲覧側のシステムのみを提供していて,データはアルバイトの学生さんに手作業で入れてもらうという形で始まったのですが, それも大変ですし,先生方もワープロで打ったりするようになってきましたので, でしたら直接入れることができた方がいいのではないかということになりました。やはり2000年過ぎぐらいから, 先生方に直接Web上のページから入力してもらうような,入力側のシステムも手がけて,使ってもらうようになりました。

インタビュアー: 今までは無かったシステムを取り入れるということで,先生方の心理的な抵抗等はありましたか?

中西先生: そのあたりがやはり一番難しかった点ですね。いかに抵抗なく移行してもらえるかということで,色々な仕組みを用意しました。 その一つですが,前年度に学生が入力したものを元にして,特に変更がなければ簡単な操作で更新ができるようにしました。毎年, ワープロで全ての文字を打たなくても,Webページにアクセスして自分の授業を探し,更新や登録のボタンをワンクリックすれば, 登録が出来るような仕掛けを用意して,使ってもらうようにしたのです。かなりの割合の先生が直接入力してくれましたので, 相当うまくいったと思っています。

■ シラバスとは本来どうあるべきか?
 ~原点に立ち戻る~

インタビュアー: そのように拡張してこられたシラバスですが, 論文によると2010年度は違うシステムになってしまったのですか。

中西先生: 2010年度については,学務ネット(注:愛知教育大学が利用している授業・修学・学生生活をサポートするシステム) 付属のシラバスが使われることになりました。 というのも2010年度に関しては,2009年度までのシステムで対応できないような要求が出てきたのです。 例えば,授業を毎回やった後の授業外学習指示の随時入力,そしてデータの随時更新です。これらについて, デザイン的にも使い勝手の面からも受け入れることができなかったのです。
 システムを作るのはいいのですが, それが利用者の立場に立ったものになっていないと,入力しづらかったり,閲覧しづらかったり,目的のものが見つけづらかったりして, 結局は使われなくなってしまうのですよね。そのあたりで2009年度までにやってきたものと,当時要求されたものが相容れなかったのです。 そこでシステムの提供からは手を引いて,もう一度原点に立ち戻ってシラバスは本来どうあるべきか, どういう形であれば使いやすいのかということを一年かけて学生さんと一緒に調べたのがこの研究でした。

インタビュアー: どういうシラバスが使い易いという結果になったのでしょうか?

中西先生: まずは検索機能がしっかりと充実していないといけません。学生さんが興味をもった項目があれば, それを簡単なキーワードやボタンクリックで検索でき,それにあう授業が一覧として出ることが必要です。 また,ホームページからの見つけやすさですが,色々な大学のシラバスをみていくと見つかりにくいところにリンクがあったりします。 大規模大学で学部毎にシラバスがあると,学部毎にWebページの体裁も違って,シラバスへの辿りつき方もばらばらです。
 愛教大の場合,2009年度までのシステムですと,大学のトップページから「在校生」向けのリンクを辿ると3回のクリックでいけたのですが, 2010年度のものは学務ネットを共用していた関係で,さらにワンクリック,意味のないページが途中に入ってしまう形になりました。 また,愛教大の場合,学生さんの所属によって,とれる授業が決まっているので,とれない授業まで検索できてもあまり意味がないのですが, 2010年度のものはそういった条件では選べず,授業名の一部や教員名の一部等,キーワードを何かいれないと検索できなくなってしまいました。 ですから,自分の所属の授業一覧は全く見られず,単にデータベースがあってキーワード検索をするだけという状態でした。

■ 2011年度のシラバス・システム
 ~利用者が吸い寄せられるシステムを~

中西先生: ただ,2009年度までは教務課のシステムと独立してシラバスのシステムをやっていましたので, 学生さんが何曜日の何限が空いているので授業をとりたいといった時に,私のシステムでは探すことができなかったのですね。 簡単に言ってしまえば,時間割とシラバスをリンクすることがずっと課題になっていて, 年によっては学生さんに時間割表を手入力で入れてもらって対応づけしていたこともあったのですが, それも大変だったのです。
 そこで昨年度,教務課の方と相談して,2011年度からは,入力してもらったシラバスを教務課から頂いて, そのデータを元にシラバスの閲覧システムを提供するという形でやっていくことになりました。ですので, 今年からはまた使い易いものに戻っています。さらに曜日・時限による検索もできるようになり, 一層使い易くすることができました。
 特にカテゴリー検索では,学生さんの所属からも簡単に検索できますし,自分のスケジュールにあわせた曜日時限検索もできますし, これまで通りのキーワードによる検索もできます。世間一般で必要とされる検索機能はほぼ提供しているでしょうね。

検索項目の工夫
サムネイル  コンパクトな検索画面だが,検索項目の工夫により,空きコマにいれる授業を調べるのに便利。教科区分が選択式のため, 本学の事情に詳しくない学外者にとっても検索しやすい。

シラバスの見せ方の工夫
サムネイル  見たい項目の上にマウスを移動するとその箇所が大きく広がり全文が表示される。 多くの情報を持つシラバスだが,全体も見渡せるし,細部も見ることができるよう工夫がされている。
※画像をクリックすると拡大図が別ウィンドウで表示されます。

インタビュアー: 一般的な話として,システムを作ってデータを入れて,さあ使って下さいといっても, 使ってもらえないことがありますね。それはどのように解決したら良いのでしょうか?

中西先生: 利用者が便利だから使ってみたいなと思うシステムに仕上げていかないといけないと思います。 さあ用意したから使ってください,ではなく,利用者が自然に吸い寄せられて使いたくなるようなものを作る必要があります。今回のシラバスでいうと, ここひとつだけ空いちゃったんだけれども何か面白い授業がないかなという場合,それを調べるには紙の時間割表を1年から4年までずっと見ていって探しても, 今度は授業の中身が分かりません。しかしシステムを使えば,空き時間を入れればさっと一覧表が出て,キーワードを入れるとそれが絞り込める, といった点で使ってもらえると思います。 自分の所属があって授業の一覧があって,それがみれるだけのシステムであれば,紙でそのページをめくってしまえばいいだけになってしまいますので。

インタビュアー: 今後,この愛教大発のシステムが他大学に広まっていくようなことがあるのでしょうか?

中西先生: 調べて分かったのですが,他大学さんでは業者に任せてしまっていることがほとんどですね。 データの移行なども含めて特定の大学のものを別のシステムを使っている他大学にというのは難しいですね。それに,私のほうは将来, そういうシステムを作る学生さんを育成していますので,大学や企業がそういったシステムを買ってくれなくなって, 卒業生の就職先が無くなっても困りますしね。

インタビュアー: では,そういったノウハウを学んだ学生さんが,学生の側からも教員の側からも使い易いシステムを, 就職先で開発されるということになるかもしれませんね。

中西先生: 私の研究室に来た学生には,そういうシステムをきちっと開発できるようにと, 教育しているつもりですよ。

■ 情報系に進んだきっかけ

インタビュアー: 情報系の研究を始められるようになったきっかけがあればお教えください。  

中西先生: もともとは小さい頃から父親の影響でラジオを作ったり,電子工作をしたりということが好きでした。 その後,高校にはいってから,県に1・2台しか無かったミニコンピュータに触れる機会があり, その時にコンピュータって素晴らしいんだな,とコンピュータの魅力にとりつかれました。 ちょうどその頃,情報工学系の学科が全国の大学に出来てきましたので,迷わずそちらに進みました。
 昔のコンピュータは,簡単には使えず,いうなれば手とり足とりコンピュータに指示してやらないといけないようなものでした。 人間が処理していくプロセスを事細かに分かりやすく説明してやれば,コンピュータはその通り動きます。 抽象的に何々をやって下さい,といってもコンピュータは動いてくれません。 最初に何をして,次に何と何をこうして,最後結果を出して下さい,のように細かく手順を示してやれば, 人間がやっていることと同じことを間違わずに高速にできます。逆に,人間がちょっとでも途中で間違えれば, コンピュータも同じように間違えます。それは今も昔も一緒ですね。
 最近はコンピュータといった大げさなものではなく,情報端末が普及してきましたので, かなりの部分がWeb上のアプリケーションを使うようになるのかなと思います。 シラバスも情報端末から見るということになれば,画面を工夫して小型の画面でも見られるようにする必要がありますね。

■ 電子化することの意義

インタビュアー: 図書でも電子書籍といったものが出てきていますね。だんだん紙の書籍から移行していくんでしょうか。  

中西先生: それは両方うまく使い分けていけばいいと思います。紙の書籍ですとぱらぱらめくって, ぱっと目についたところから読み出すことができます。かといってかなり分厚い本を持ち歩いて読みたいかというとそうでもありませんし, そういう時は電子書籍がいいですよね。何か見たい本があれば,キーワードで検索すれば,それに関連したところがでてきます。 内容によりけりでしょうから,両立する分野もあれば,両立しない分野もあるでしょうね。学術関係の論文などですと,紙に出さなくても, パソコンで検索して,即見られるという方が都合がいいでしょう。じっくり読みたいものですと,印刷してということになるんですが, 軽くさっと読むくらいなら画面で十分です。また,軽めの気分転換に読みたい本ですと,紙で手軽に持ち歩いて, ぱっと読めるというほうがいいですね。今後も使い分けられると思います。
 ずいぶん前になりますが,附属図書館委員会の委員長をやった時に頼まれて,将来の電子図書館像をテーマに原稿を書いたことがあります。 そこで書いたのは,今は紙を貸し出しているけれども,そういった情報端末的なものに情報を貸し出すという形で見てもらう, 例えば電子的に転送してといった形で見てもらって,返却期限はそのデータが有効に残っている期間に設定し, その期限がきたら自動的に消える,そういった形であればいちいち返却の手続きも要らなくなります。 図書館はそのようなデータを提供する機関になるのではないかと,未来像を描いていました。

 リポジトリでは,毎月何本ダウンロードされたかというメールがきますね。自分では幅広く読まれるような内容ではないかなと思いつつ, 毎年書いているのですが,そのメールを見ると,そんなに数が多いわけではないのですが,今の時代, 様々な人がダウンロードして読んでいるのだなと感じます。電子化されていないと見向きもされなかったものが, 電子化されることによって検索され読んでもらえる,という点において,愛教大のリポジトリに限らず, 色々なものを電子化していくということはそれなりに意味が深いんじゃないかなと思います。

インタビュアー: 今後の研究の展望やご予定をお教えください。  

中西先生: 年々,セキュリティ面のことが非常に問題になっているので,今後は様々なデータが, より安全に気軽に使えるようになればと思っています。
 現在,愛教大では,企業からの学生さん向けの求人情報は,企業の方から紙で頂いて企業名だけ入力し, それをクリックするとスキャンされた求人票がpdfで見られるようなものが提供されているようです。 今,学生さんが考えているシステムですが,シラバスと同じように職種や求人内容等, 求人票で頂いた項目を全て電子化しておけば,キーワード検索で,自分の希望する企業をより見つけやすくなります。
 情報の入力は大変ですが,その辺は企業さんに直接電子的に入力していただく形にするのです。 そうなってくると企業さんが本当に入力したものなのか,誰かがなりすましていれたものなのか, そこをきちっと認識区別していく必要があるのです。

 ■ この分野へ進む方へのメッセージ

インタビュアー: 今後,この分野へ進まれる方へのメッセージをお教えください。

中西先生: かなりコンピュータが普及してきたといっても,まだまだ,システムを作って,より人間が便利に使うといった分野は残されていると思います。 就職の際には大きな企業に目が行きがちですが,極端な話,町工場でもコンピュータを活用されているところはあります。様々なところで, 「自分がリーダー的な立場でその組織の情報システムを一から組み上げていくんだ」というくらいの気概をもって, 学生さんにはこの分野に進んで欲しいですね。


(インタビュー・まとめ)愛知教育大学情報図書課
   情報サービス係係長 古田
(写真)  情報図書課長補佐 伊藤



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