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2013年3月27日(水)に 愛知教育大学学術情報リポジトリ は登録件数4,000件を突破いたしました。
文献をご提供いただいた皆様,リポジトリをご支援くださった皆様に心より御礼申し上げます。

4,000件突破記念として,論文 "留学生のe-Learningへの取り組みの考察 ―ALC NetAcademy2の日本語
聴解コースの場合―" 愛知教育大学研究報告, 人文・社会科学編. 2013, 62, p. 11-18.
の著者である
日本語教育講座 稲葉みどり先生 にインタビューをおこないました。


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↑日本語教育講座 稲葉先生


稲葉先生プロフィールは
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研究者総覧(日本語)




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↑インタビューの様子です

稲葉先生インタビュー 2013年5月22日(水) 於:図書館事務室

■ 論文内容について

インタビュアー: まず、先生の研究報告第62輯の論文「留学生のe-Learningへの取り組みの考察 ―ALC NetAcademy2の日本語聴解コースの場合―」はどのような内容ですか?

稲葉先生: 平成23年度後期に本学留学生を対象として日本語e-Learningの授業 (「日本語ネットアカデミー2011」)を試行的に実施しました。その授業実践の内容と、留学生がパソコンによる オンラインの日本語学習にどのように取り組んだのかを、授業観察や学習履歴の分析を通じて考察した結果を紹介しています。

インタビュアー: 論文の始めに「近年、インターネットやパソコンなどのメディアを 媒体としたe-Learningによる外国語学習は広く行われるようになった。愛知教育大学ではe-Learningによる 外国語学習システム(ALC NetAcademy2)が平成23年度から本格的に導入され、英語教育の分野で 活用されている」とありますが、実は私は知りませんでした。
 このあたりが論文に説明されていましたが、簡単にお願いできますか。

稲葉先生: このe-Learningというのは、学務ネットの「Eラーニング学習サイト」にログインして メニューの中から学びたいコースを選んで学習するものです。学内外を問わず、アクセスが可能な限り いつでもどこでも自由に学習に取り組むことができます。学部生のTOEIC等の英語学習支援のために導入された システムですが、その中に日本語学習プログラムも含まれていましたので、これを留学生の日本語教育にも 試行的に導入してみました。

インタビュアー: 例えば、パソコン画面はどのようになっていますか。日本語ですか、それとも母国語ですか。

稲葉先生: このプログラムでは、練習の指示や訳語を示す媒介語が日本語、英語、中国語の 3つの中から選択できるようになっています。媒介語は英語でやっていてもボタン1つで簡単に 日本語・中国語に変更できます。

インタビュアー: 日本語プログラムの場合、どのような学習コースがあるのですか。

稲葉先生: 語彙、聴解、読解、文字、日本語能力試験模擬テストの5つのコースあり、 初級から上級までのレベルの学習内容が用意されています。自分のレベルに合わせて、学びたい コースをクリックして、画面の指示に沿って解答を選ぶような形で進めます。

インタビュアー: 授業はどのように進めたのですか。

稲葉先生: e-Learningのというのは、本来学習者が自主的、自律的に学習に取り組み、 授業時間等に拘束されないで学習できることが利点の一つですが、一方で学習者への依存度が高く、 教師不在で継続的に学習を進めるのは必ずしも容易ではありません。そこで、私は決まった時間に パソコン教室に集まり、教師の管理下でe-Learningプログラムに沿って一斉学習する「授業」と、 教室外での自律的学習を推奨する形態を組み合わせました。

インタビュアー: 留学生の取り組みはいかがでしたか。

稲葉先生: 学習履歴を分析してみたら、「主に授業内で学習した人」、授業に来られず、 帰宅後など「主に授業外で学習した人」、「指定ユニットだけを学習した人」、「指定外ユニットも 学習した人」等、様々な学習への取り組みが見られました。

■ 専門分野について

インタビュアー: 続いて、先生の専門分野・研究テーマについて教えてください。

稲葉先生: 私の専門分野は外国語教育です。「外国語をどのように教えたら、一番効果的に上達するか」を 解明するために様々なテーマに取り組んでいます。まず母語がどのように習得されるのかを追究し、 次に外国語がどのように習得されるのかを探求します。その上で、教師はどのように教えたら外国語学習を 支援できるかを考察しています。

インタビュアー: どうやって研究を進めているのですか。

稲葉先生: これまでの研究は日本人の子どもと大人、日本語を第二言語として学習する様々な 国・地域の人(留学生等)に協力してもらい、言語資料を収集して進めてきました。私の集めた 言語データの一部(総計約200名の発話データ)は近々米国カーネギメロン大学のコーパスCHILDESに 寄贈して公開する予定です。この言語データはJCHATというフォーマットでデータベース化してあり、 CLANという解析プログラムを用いて様々な数量的な分析ができます。米国カーネギメロン大学の Brian MacWhinney博士が開発したもので、言語発達の研究において世界で広く用いられています。

インタビュアー: それについて、もう少し詳しくお願いします。

稲葉先生: 私のデータベースの特色は、録音とテキスト(録音を書き起こしたもの)が 一体となっていますから、テキストの分析だけでなく、音声を再生して、話すスピードや イントネーション等を確認、分析することも可能です。音声と一体で収録されるので、 データの質としては信頼できます。録音とテキストが一体のものとしては、同じカテゴリーの中では、 私のデータが現段階では世界初になります。
 言語研究においては、1人の研究者が限られた時間の中で補助なしで収集整理できる言語資料の量には 限界があります。言語資料の収集と整理に多くの時間、労力、費用等がかかり、それがこの分野の 研究をする人の大きな負担となってきました。私の寄贈する言語資料が少しでも多くの研究者に 活用されればと思います。
 言語資料を公開するのには、もう一つの意味があります。これまで、私は今回公開する言語データを 基にして博士論文を含めいくつかの研究を行ってきました。例えば、本学のリポジトリにある7件の論文などです。
 
 言語習得の研究論文には分析結果等は載せられていますが、研究者の用いた言語資料のすべてが 公開されていることはそれほど多くはありません。しかし、研究データが見られなければ、 反証することはできません。極端なことを言えば、同じ言語データでも別の研究者が解析したら、 結果が異なるという可能性も否定できません。言語に関わる研究が真の科学として発展していくためには 言語データの公開は必須だと考えています。
 私は言語データを公開することで、自分の研究論文に対する反証、批判、異論などが寄せられることを 期待しています。批判にさらされることで自分の未熟な研究を精緻化していくことができるからです。 そのためにも、研究論文はだれにでもアクセスできる形で発表したいと思っています。その点、本学の リポジトリは貴重な発表の場所だと考えています。

■ リポジトリについて

インタビュアー: 最後に,リポジトリに関する意見・要望等がありましたら教えてください。

稲葉先生: リポジトリは研究の発展に大きく寄与するものだと思います。海外の学術誌の 掲載論文はダウンロードに多くの場合費用がかかります。私の分野の論文ですと、費用は概ね 1本US$20~$40ドルぐらいでしょう。必要な論文が複数あると結構な額になります。クレジットカード払いで、 研究費は使えませんから、正直、入手したくてもちょっと考えてしまいます。その上、これらの論文は 中を見てから購入するかどうか決めることができません。ダウンロードしてみたら、思ったものと 違ったということがあります。また、有名な論文は高額なこともあります。
 これには投稿する研究者の側にも影響を及ぼします。せっかく一流誌に掲載されても、限られた人にしか 読んでもらえないということです。掲載論文を著者自身が自分のホームページ等に載せることは出版社より 禁じられていますから、電子ジャーナルは研究成果を公開することをある意味、制限したと言えます。 紙媒体では購読していない図書館もあり、文献の入手は難しくなったような気がします。

 さて、話をリポジトリに戻しましょう。本学のリポジトリは誰でも無料でアクセスして論文をダウンロードする ことができます。研究者にとってはとても有り難い存在です。また、著者にとっても研究成果を広く公開できます。 私は毎月、自分の論文のアクセス・ダウンロード状況を見るのを楽しみにしています。古い論文でも見てくれる人がいます。 ただ、どなたが見ているのか分からないのが残念ですが。
 私はリポジトリを使って世界に自分の研究成果を発信したいと考えています。例えば、教科学や教科開発学のような 新しい学問分野は本学が先駆と考えています。ですから、教育創造開発機構の論集や博士課程論集等の新しい学問分野を リードしていくような研究論集は、リポジトリで自由にアクセスできることが学問分野の発展にとても重要だと考えています。
 リポジトリに掲載される本学の研究報告は、論考を自由に書くことができます。学会誌的な内容ではなくても、 前段階の研究として発表したいものもあります。また、他大学のリポジトリでは全文を見られないものもありますが、 本学は全部見ることができます。そしてこれらは後世に残ります。最近は卒論や修論の要旨のリポジトリ化も 始まっていますが、リポジトリに掲載されることにより、いろいろな方面から閲覧される可能性出てくるわけですから、 「しっかりしたものを書かないといけない」という学生の意識を高め、論文のレベルアップに繋がると思います。

 また、音声や映像を本文と合わせて公開すれば、リポジトリで今までできなかったカラーで 3次元的な表現ができるようになります。そうすれば、研究は一層発展するでしょう。データ容量の制約等あるかと 思いますが、本学のリポジトリで実現されると嬉しいです。


(インタビュー・まとめ)愛知教育大学情報図書課 副課長 牧野
(写真)  情報図書課資料利用担当 稲葉



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